
審美歯科は、むし歯や歯周病といった病気の治癒を目的とした治療ではなく、歯本来の機能に見た目の美しさをプラスする治療です。歯が本来あるべき場所にきれいに並び、自然な色や形を回復すると、顔全体がいきいきと健康な美しさを取り戻します。特に前歯は見た目の印象を大きく左右する中心点ですので、この改善なしに歯科の審美は語れません。
歯が欠けたところには詰め物をし、変形した歯は形を整えます。その過程で、変色、脱色、抜け落ちた歯、折れた歯などをより天然歯に近い歯にするには、材料の選択とともに歯科医に多くの知識と治療技術が求められます。
当医院の審美歯科では、人工ダイヤモンドとしても使用されているジルコニアセラミックと、透明感に優れたe-maxを中心に、セラミックによる治療を行っています。
ジルコニアは人工ダイヤモンドとしても大変有名ですが、強く・軽く・美しく、そして体に優しいセラミックです。身近なところではよく見かける白いセラミック製の包丁などもジルコニアでできています。医科では、骨の代替素材として人工関節に使用されるなど、生体親和性が高く大変丈夫で安全なセラミックです。
現在、歯科補綴材料として金属やレジン樹脂、金属にセラミックを焼付けたメタルボンドクラウンなどが広く用いられていますが、近年金属アレルギーなどの心配がないセラミックによる歯科治療が注目されています。
歯科用セラミック材料に求められる要素は、強度があり・美しく・安心できる素材であることです。ジルコニアは強度と靭性をもち、耐久性・耐食性・耐熱性にも非常に優れ、美しく生態親和性も高いことから、金属材料に取って代わるものとして最も注目されているセラミックです。
ジルコニア-5つの特徴
【1】強くて丈夫 ―奥歯でしっかり物を咬めます―
金属アレルギーなどの心配がないセラミックを使用した歯科治療が注目される中、ジルコニアは多種多様なセラミック素材の中でも群を抜いて頑丈であり、お口の中の様々な状況にも耐えられる硬さを持っています。
【2】軽くて自然な咬み心地 ―金属の約3分の1の軽さで歯にかかる負担を軽減―
ジルコニアは一般治療で主に使用される金属に比べ、重量が約3分の1と軽量です。そのため、ブリッジとして口の中に装着したとしても違和感が少なく、自然な咬む力を回復してくれます。
【3】天然の歯のような白さ ―金属では出せない美しさと白さ―
一般的な金属の土台(補強フレーム)のあるメタルボンドクラウンとは異なり、ジルコニアは白く、天然歯のように光の透過性があるため、見た目が大変美しい自然な歯が作り出せます。天然歯の時には当たり前だった自然な笑顔が戻ってきます。

従来の金属使用メタルボンドクラウン
ジルコニアセラミッククラウン
【4】安全性に優れた素材 ―身体に優しく金属アレルギーはありません―
口腔内装着をする物ですので、歯科に用いる材料には強度や美しさとともに高い安全性が求められますが、ジルコニアは人工関節としても使用されるほど人間の体に優しい材料です。また、ジルコニアは金属不使用なので、金属アレルギーを引き起こす心配がありません。

従来の金属使用メタルボンドクラウン
ジルコニアセラミッククラウン
【5】ジルコニアの機械的性質 ―最新の歯科技工器材で精度の高い補綴物―
現在、歯科医療学会において、ジルコニアは金属材料に取って代わる材料として認識されつつあり、世界で既に年間500万本以上の補綴物として使用されています。
「empress max(エンプレス・マックス)」の意を持つシステムで、ジルコニアに並んで注目を集めている素材です。ニケイ酸リチウムガラスセラミックというガラスを主成分とするセラミックですので、透明感に優れ、色調もきれいです。本来の天然歯と同じか、それ以上の色調・形態を再現でき、金属を使用していないので金属アレルギーの心配もありません。
セラミックは審美性に優れているだけでなく、「接着力に優れている」「プラークがつきにくい」といった利点も併せ持っています。それゆえに、当院で行う審美治療もそのほとんどがセラミック治療です。ただし、セラミックにもデメリットはあります。硬質で長持ちするという特長を持つ反面、硬質だからこそ強い圧力がかかった場合などには、しなることなく破折してしまう可能性があるのです。
そこで当院では、治療すべき患部(むし歯など)の形状によっては、部分的にダイレクトボンディングを組み合わせた治療をご提案する場合があります。
ダイレクトボンディングとは
ダイレクトボンディングとは、歯科用の強化プラスチックを歯に直接詰めて治療する方法で、セラミックによる被せ物(クラウン)や詰め物(インレー)に比べて、歯を削る量を抑えられるというメリットもあります。主たる治療患部とは離れた部分に小さなむし歯がポツッと存在しているような場合、全体をセラミックで治療しようとすると、補綴物がT字型に近くなってしまうことがあります。そうすると、治療後の時間の経過に伴い、T字のくびれた部分が割れたり折れたりしてしまうことが考えられます。
そのようなとき、主要な患部だけをセラミックで治療し、離れ小島のようになっている小さな患部はダイレクトボンディングで治療すると、美しさとともに、長持ちする治療が実現します。従来の歯科用プラスチック(レジン)では、天然歯のような自然な色や質感を再現することが困難でしたが、近年では、透明感や色調が豊富に揃った審美修復用プラスチックが開発されていますので、このようなこだわりを持った治療も可能になっています。
オールセラミック
オールセラミックとは、金属や混ぜ物を一切使用していない完全なセラミック素材の人工歯です。白さや透明感に優れ、内部に金属を一切使用していないので、自然な色合いが再現できます。審美性に優れていることから、主に前歯の治療に適していますが、強い力が加わると破損する恐れがあるため、歯ぎしりが強い方や咬み合わせが不自然な方は注意が必要です。
メタルボンド
メタルボンドは、金属を中心として外から見える部分にセラミック(陶器)を貼り付けた人工歯です。金属部分が見えないので審美性が高く、セラミックによって天然歯に近い色調や質感を再現することが可能です。また、土台に使用した金属が強度を高めている点も素材の優位性を高くしています。
ハイブリッドセラミック
セラミック(陶器)とレジン(プラスチック)を混ぜた材料で作られた人工歯です。オールセラミックよりも柔らかく、ほかの歯にダメージを与えにくいというメリットがある反面、年数の経過によって変色しやすいというデメリットもあります。
ラミネートベニア
ラミネートべニアは、歯と歯の間の隙間が気になる場合や変色が強くてホワイトニングでは対応できない場合などに、歯の表面を少し削り、つけ爪のようにセラミックのシェル(薄片)を歯に貼り付ける治療法です。