当院が目指しているインプラント治療とは、ただそこにインプラントを埋入させるだけではありません。
「どうしてそこが歯を失うことになってしまったのか」
その原因追究をした上で、再び同じ治療をすることのないように再発を防ぐことを視野に入れた治療、つまり『包括的治療』を第一に掲げております。
歯を失った原因を究明して再発を抑える包括的治療
包括的治療とは、患者さまのお口を一つ単位と考えて、インプラント治療、補綴、咬合治療、歯周病治療、矯正、歯内療法など、全ての知識・技術を駆使して行う総合治療のことです。
インプラント治療における重要な留意点は、無計画にインプラントを埋入した場合、もともとそこにある歯牙をダメにした原因が、せっかく入れたインプラントにも必ずトラブルを再発させてしまうことにあります。
当院では、歯を失った原因が歯周病やむし歯などの細菌なのか、あるいは、咬み合わせによる力学的な問題なのかなど、あらゆる視点からお調べします。そして、歯周病、補綴、咬合、矯正、歯内療法学など全てを考慮した上で、患者さまのお口の状況に最も適したインプラント治療を、科学的根拠に裏付けられた技術で行っております。
インプラント治療は人工歯根療法ともいわれ、歯が抜けたところにチタン製の人工歯根を埋入し、その上に人工歯をかぶせる治療方法です。手術によって埋め込まれたインプラントは骨にしっかりと固定され、健康な歯のように咬むことができます。
また、インプラント治療の最大の特徴は、周囲の歯をまきこまないことにあります。
歯が抜けてしまった場合の治療には、インプラント治療以外にもブリッジや入れ歯などの方法がありますが、ブリッジの場合には、失われた歯の両隣の健全な歯を削らなけばなりません。削った結果、強度の低下によって破折などのトラブルが生じる可能性があります。
入れ歯の場合は固定式でないため、食事の際にわずかでも入れ歯自体は動揺します。この動揺が入れ歯を支える歯を刺激し続けるために、健康な歯までが抜けやすくなってしまうこともあります。また、入れ歯の面積が広いほど違和感が生じ、発音・発声に不便を感じる場合もあります。
インプラント治療は、ブリッジや入れ歯とは異なり、残っている歯に負担をかけないことにより、結果的にお口全体の機能を長期にわたり安定した状態で維持させられる治療方法だともいえるのです。
理想的な咬合再建を重要視します
「木を見て森を見ず」という諺があるように、局所に目をとらわれてしまうと、その背景にある重要な問題を見逃すケースがあります。歯は、歯周病やむし歯によって失われることも当然ありますが、根本的な原因に咬合(咬み合わせ)が絡んでいることが少なくありません。
特に受け口や開口、上顎前歯の前方突出(出っ歯)などは、上下前歯の接触が少なく、奥歯の負担域が大きくなるために注意が必要です。また、下の奥歯を失った状態のまま長い時間が経過すると、以前は咬み合っていたはずの上の歯が、徐々に下降してしまうといった問題もあります。当院では、これらの問題もしっかりと改善した後に、インプラント埋入の準備に入ります。
歯を失ってインプラント治療が必要になった要因に咬み合わせが関わっている場合、せっかく入れたインプラントを再び失うことにならないよう、当院では、スプリントというマウスピースによる術後管理を行っています。
咬み合わせがズレていると特定の歯に余計な負荷がかかり、その負荷の積み重ねが、歯をダメにする一因となっているケースが少なくありません。そのような場合、術後のスプリントで理想的な咬み合わせに整えていくことは、トラブルの再発を防ぎ、インプラントを長持ちさせることに大いに役立つのです。
当院でインプラント治療を受けていただいた患者さまは、ご説明のあと、ほぼ100%の方がスプリントを使用し、インプラントを長持ちさせることに成功しています。
インプラント治療を行うには、まず患部の周囲組織の状態を調べるなど、インプラント治療が行える状態かどうかを確認することが必須です。その際、むし歯や歯周病など、前もって治療しておくことが必要なことと同等かそれ以上に重要なのが、インプラントを入れる「スペース」があるかどうか、ということです。
たとえば、下の歯を失ってから長い時間が経過していると、上の歯がだんだんと下降してきて、上の歯と下の歯ぐきの間の空間が狭くなり、失っていた下の歯をインプラント治療で再建しようとしても、その歯を入れるスペースがないという状態がよく見受けられます。
また、失った歯の両隣の歯が、その空きスペースに倒れこむように移動してしまうことによって、そのままでは失った歯の再建ができないというケースもあります。そのような場合には、インプラント治療を行う前に、落ちてきてしまった歯や、傾いてしまった歯を矯正(牽引)して、インプラントを入れるスペースを確保します。
インプラント治療を行うには、歯槽骨の厚さが重要です。他院で「顎の骨が薄いので、インプラント治療をすることができません」と診断されてしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
歯周病やむし歯の悪化によって歯を抜いてしまうと、顎の骨への刺激が少なくなることによって、顎の骨がだんだんと薄くなってしまう傾向にあります。上顎の場合、上顎洞という空間が広がり、骨の厚みが減少する傾向にあります。そういった経緯で薄くなってしまった顎の骨を補い、インプラント治療を受けられる状況へ導く治療法が「サイナスリフト」です。
当院では「サイナスリフト」などを用いた、顎の骨が薄い方へのインプラント治療に実績がありますので、他の医院で断られた方でも、是非ご相談ください。
「サイナスリフト」とは
サイナスリフト (Sinus-lift procedure) とは、サイナス(上顎洞)と呼ばれるスペースに、人工骨などを移植することで骨を増やす治療法です。上顎の奥歯の部分に対して行うのが一般的で、患者さまの上顎の状態に合わせて、人口骨によってインプラントを植立できる厚さをつくります。
当院では術前、術中にCTを撮影することで、安全・確実な治療を実現するとともに、また最も理想的な位置にインプラントを埋入することをも可能にしています。またCTの撮影を外部機関に依頼する必要が無いことが、患者さまの通院回数の軽減にも繋がっています。
最新鋭歯科用CTを完備
従来のレントゲンは平面でしか得られなかった情報が、立体的で奥行のあるものになり、患者さまの口腔内の環境をより具体的にイメージすることができるため、治療の精度が格段にあがりました。
<CTによる歯科治療の優位点>
1.インプラント術前診断および術中の診断
術前に顎骨の形態、神経、血管の位置関係を3次元的に把握できるため、インプラントの埋入位置を術前にシミュレーションすることにより、確実で安全な手術が可能となります。
2.親知らず抜歯時の歯牙状態、神経までの距離の診断
歯根形状、下顎管(神経、血管が入っている太い管)までの距離が正確に診断でき、より安全な処置が可能です。
3.歯内療法(根管治療)
歯牙内部(神経組織)の治療において、歯根の形状及び歯根の数などが正確に把握できることから、見落としのない感染源の除去が可能となります。
<RF社製 NAOMI CT >
頭部の周りを360°回転させて撮影できるフルスキャンCTです。高画質(最少スライス幅0.068mm)の撮影と、アーチファクト(X線吸収率の高い金属などの物質を撮影した際にあらわれるノイズ)の軽減が可能です。
撮影エリアは最大で160mm×83mm。これにより、左右の親知らずの根尖と下顎管との位置関係を同時に診断できます。また、座位で撮影できることから、モーションアーチファクト(患者さまの動きによるブレ)が最小限に抑えられます。
現在、インターネットをはじめとする様々な媒体によって、インプラント治療に関する情報があふれています。その中には、「年間、数千症例を治療・・・」といった、まるで数を競っているかのような情報や、格安で受けられる手術の情報、また外科手術として括るにはあまりに手軽に治療できるかのように思える情報も含まれています。
正確な診断・治療によって施されたインプラント治療は、患者さまのお口の中で、ご自身の歯と変わらない機能を果たすことは確実です。しかしインプラント治療は、決して簡単な治療ではありません。だからこそ、安心・安全・確実な治療を受けるためには、多くの情報を取捨選択し、その正否やメリット・デメリットといったことを見極める必要があります。
まずは、もともとの歯を失った原因や咬み合わせ、残っている歯牙や歯周組織の状態、歯を失っている部位の骨の状態、埋入後のメンテナンスのし易さなど、術前に調べておくべきことがたくさんあります。これらを正確に調査せず、安易に見た目や治療期間の早さ、費用を抑えることなどだけにとらわれてしまうと、思わぬトラブルが発生する可能性があります。
確かに、早く安く治療できるに越したことはありません。しかし、調べるべきことをしっかり調べ、待つべき期間はしっかりと待ち、生体に適した質の高い材料や技術を選択して初めて、歯として最も重要な永続性が得られる、つまり、お口の中でインプラントを長期間機能させられるということを忘れてはならないと思います。
インプラント治療は、歯を失って困っている患者さまにとっては救世主のような存在です。しかし、直ちに命にかかわるような救急医療ではないのですから、急ぐ必要はありません。しっかりとした診査診断を受け、じっくりと時間をかけて検討されることを、是非お勧めいたします。