根管治療(歯内療法)

根管治療

むし歯が歯根の内部にまで進行した場合、その空間を清掃、消毒する治療を根管治療(歯内療法)といいます。一般的なむし歯の治療と大きく異なるのは、歯の内部が暗く構造的に非常に複雑なため、全体を正確に診断・治療することが困難な点です。

当院では、この治療をより安全・確実に行うために、様々な治療技術、機器、材料を駆使し、安全・確実な治療に努めています。

歯を抜かずに残すための治療法
初期のむし歯は、歯を削って詰め物を入れることで症状は改善されます。ところが、むし歯が神経にまで達して炎症が起きてしまった場合は、麻酔をして歯を大きく深く削り、患部を完全に除去しなければ抜歯するしかなくなるケースが多くなります。こういった状況の歯を可能な限り残すために行うのが根管治療です。

具体的な治療内容と根管治療の重要性

根管治療具体的な治療方法としては、まずは、歯の神経が入っていた部分(根管)を、専用の器具を使ってきれいに洗浄し、薬を詰めた後で詰め物をします。根管は、建物で言えば「基礎/基盤」にあたるものなので、歯を健康で長持ちさせるためには適切な治療を行う必要があります。

根管治療が不十分なまま被せ物で外側を修復しても、後々に根の先端が化膿して歯を失うことになってしまったり、再治療が必要になってしまいます。そのため、根管治療には綿密な歯科技術が必要とされます。

マイクロスコープによる精密な治療

根管治療が不十分な状態とは、薬液が根管の先まで詰められていない状態や、治療跡が根の先から飛び出てしまっている状態です。その原因は、見えないところを手先の感覚や経験だけを頼りに治療するしかなったことによるものでした。そこでドクターの強力な武器となるのが、マイクロスコープとよばれる顕微鏡です。

マイクロスコープ
肉眼ではどこに歯の根があるか判りません
マイクロスコープ
先端部分の汚染された状態が明確に判ります

最大で肉眼の21倍にクローズアップされた状態で処置できるため、根管の中までしっかり確認でき、破折線の有無、感染物質の有無、第4根管の探索などが可能となります。

当院のマイクロスコープの特長 マイクロスコープ
ドイツの光学機械メーカー・カールツァイス社製のマイクロスコープを導入しています。

【特長1】明るく自然な照明-LED照明搭載
従来のハロゲン照明、キセノン照明に比較して発熱が少なく、自然光に近い状態で治療できます。

【特長2】あらゆる部位への対応が可能-フォルダブル鏡筒搭載
2箇所ある関節が可変することにより、従来は180°だった鏡筒部分の回転範囲が360°へと進化し、あらゆる方向から治療部分へのアプローチが可能となっています。

根管治療の流れ

患者さまの歯の状態によって、治療の手順や通院期間は異なりますが、大きな流れとしては以下のようになります。もちろん、しっかり麻酔を効かせた上で治療を行いますので、痛みはほとんどありません。

【1】むし歯になった部分を器具を使って除去します
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【2】神経のスペースに治療しやすいよう穴をあけます
次へ
【3】ファイルという器具を使い、歯の根の感染した部分を除去します
次へ
【4】炎症がおこっている根管の先まで薬を詰めて、バイ菌が入らないように根管を封鎖します
次へ
【5】根管治療後の歯に、詰め物・被せ物を取り付けます

薬を詰める方法にこだわっています

根管治療で最も重要になるのが、根管の先まで隙間なく、薬剤(ガッタパーチャーという充填材)を緊密に詰めることです。これが、再発を防ぐための重要ポイントですので、当院では、側方加圧根充垂直加圧根充の2つの治療方法を併用して行っています。

薬を詰める方法

歯の根の感染部分を除去した後、マスターポイント(主となるガッタパーチャポイント)を1本入れ、残りの隙間にアクセサリーポイント(先端のとがったガッタパーチャポイント)を入れて詰めていくのですが、細い針状のガッタパーチャーを側方に加圧しながら何本も詰める治療法が「側方加圧根充」です。側方加圧根充は、比較的治療がし易いことから広く採用されている方法ですが、隙間ができやすく、尖端が枝分かれしていたり曲がっている根管では、緊密に充填することは困難です。

そして、専用の器材を使って加熱軟化したガッタパーチャーに、垂直圧をかけて充填する方法が垂直加圧根充です。難しい治療方法ですが、根管の隅々まで緊密に充填することが可能です。

垂直加圧根管充填 CWCT(Continuous Wave Condensation Technique)とは
根管治療を成功させるために大切なのは、何を充填させるか(根充剤の種類など)ということより、その過程(感染した部分を残さずきれいに除去する工程や、充填剤を隙間なく詰める工程)です。

根管は細く、複雑に曲がりくねっている上にその形状は歯1本1本異なっています。その先端まできれいにし、また、隙間なく緊密に薬を充填するためには、マイクロスコープによる精密な治療と、それぞれの状況に応じて充填方法を使い分ける丁寧で精密な工程がとても重要です。

垂直加圧根管充填は封鎖性に優れた根管充填方法で、ほとんどの根管形態に適応が可能です。アメリカの歯内療法専門医の半数近くが採用している根管充填方法でもあります。当院では、スーパーエンドα&βを導入して垂直加圧根管充填を行っています。

スーパーエンドα&βスーパーエンドα&β

【術前】
感染対策
根の先端に病巣があります。これを根管内清掃後、CWCTにて根管充填。
【術後】
感染対策
病巣が消失し骨が再生しました。

精密な根管治療を実現する様々な機器や素材を導入

NiTiファイル(ニッケルチタンファイル)ニッケルチタンファイル
従来の歯内療法に使用するファイルは、ステンレス製のものが一般的でしたが、柔軟性が低いために湾曲が強い根管に使用すると、本来の形態を逸脱して過剰に切削する可能性がでてきます。その点、柔軟性に優れたNiTiファイルなら、湾曲根管へのアプローチも安全に行うことができます。

Wave One SystemWave One System
Wave OneファイルとXスマートプラスを用いた、次世代のNiTiファイルシステムです。Wave Oneファイルは、反復回転運動(レシプロケーティングモーション)の採用によって歯質への過剰な食い込みを抑え、ファイル破折を軽減し、短時間での根管形成、拡大を可能にしました。Xスマートプラスは、Wave Oneファイルに対応した、反復回転運動を搭載した根管治療専用機器です。

CTCT
神経を取った後も痛みが続くなど症状が落ち着かない場合は、治療が行き届いていない根管が残っている可能性があります。CTによる立体撮影により、通常のレントゲン映像では見えない根管もしっかり発見・確認してから治療を行うことで、このようなトラブルは未然に防ぐことができます。

超音波治療機器 P-MAX超音波治療機器 P-MAX
根管口明示、根管内洗浄、根充材除去などを行う際、回転切削器具よりも比較的微細な動作が可能な超音波治療機器 P-MAXが、歯への負担軽減に威力を発揮します。

エンドサクセスチップエンドサクセスチップ
P-MAXに装着する器具。古いポスト(土台)の除去、 根充材除去、根管形成に使用し、各用途により最適な物を選択します。

MTAセメント(Mineral Trioxide Aggregate)MTAセメント
MTAは、1993年に米国で開発された歯科用の水硬性セメントで、生体親和性に優れています。強アルカリ(pH12)による殺菌作用、組織を刺激することによる硬組織形成作用があるため、根管治療のリペア(空洞の修復)などに効果を発揮します。

【術前】
MTAセメント
歯の中央部に病巣ができました。この場合、本来の根管とは別の部位に病巣ができたため、通常の根管治療では治りません。
感染物質を取り除いた後、優れた生体親和性をもつMTAセメントで封鎖します。
【術直後】
MTAセメント
 MTAセメントが確認できます。
【術後1年半】
MTAセメント
 病巣の消失と骨の新生を確認。

根管治療後の処置について

ファイバーコア神経をとった歯は、神経が残っている歯に比べて強度などで劣っています。また、神経がないということは感覚がないということなので、細菌が侵入してもわかりづらい状態です。根管治療を行った歯に関しては、こういった欠点をできる限りカバーできる処置が望まれます。

まず、根管治療を行った歯は強度が著しく低下するため、クラウン(被せ物)をする必要があります。そして、この被せ物を支えるのがコアです。コアに用いられる素材は、従来は金属が主流でしたが、現在はグラスファイバー系材料のファイバーコアを採用するのが理想的とされています。

ファイバーコアの特徴
1. 歯に似たしなやかさ
金属製コアは硬質なので、強い力が加わるとその刺激が直接歯の根に伝わってしまい、根を壊してしまうことがあります。ファイバーコアには適度なしなやかさがあるので、歯自体にやさしいのはもちろんのこと、クッションの役割を果たして衝撃を吸収し、根が壊れないように保護してくれます。

2. 金属不使用
ファイバーコアには金属が一切使用されないため、金属アレルギーの心配がない点も金属製のコアとは異なる特徴です。